人がテクノロジーを育て、テクノロジーを駆使する選手が飛躍する
スポーツ界に変革をもたらす富士通の自動採点システム

2019年6月18日

取材・編集:株式会社共同通信社

2019年4月、体操の男子跳馬で国際体操連盟に「ヨネクラ」が新技と認定され登録された。跳馬に横向きで手をつき、伸身の姿勢で宙返りする間に、体を2回半ひねるもので、Dスコア(演技価値点)は同種目における最高難度の6.0となった。

体操の技は、選手の身体能力やトレーニング方法の向上によって年々高度化し、「ヨネクラ」のような新技が生まれ続けている。つり輪やあん馬、鉄棒、平均台など種目数が多い体操では、男女合わせて1,300種類を超える技がすでに認定されている。
一方で、採点競技の中でも判定が難しいとされる体操は、これまで審判の目視によって判定・採点を行ってきた。繰り出される高度な技の判定に審判の負担が増す中、2012年の国際大会の男子団体総合の決勝で、日本選手のあん馬の採点をめぐり、最終順位が4位から2位に入れ替わったエピソードは記憶に新しい。使用される器具も進化を続け、ルールも改定していく中で、トップアスリートが繰り広げる技の数々を一瞬で見極め、公平・公正に採点するシステムの導入が求められていた。

富士通は、「自動採点システムのグローバル展開」「選手育成に向けたICTの活用」「エンターテインメント性の向上とファン拡大」を目指し、2018年11月に国際体操連盟とパートナーシップ契約を締結し、自動採点システムの開発を進めている。
自動採点システムは、富士通独自の「3Dセンシング技術」を活用している。
3Dレーザーセンサーで毎秒約200万回レーザーを選手に照射、反射して戻るまでの時間で距離を計算する。それによって得た3次元データを元に、関節位置を推定し、動きを判定。「技のデータベース」と照合する。
「技のデータベース」は国際体操連盟や日本体操協会協力のもと、トップアスリートの競技データを大会や練習会場で収集し蓄積。データベースと競技中のデータを瞬時に照合することで、技を特定し採点する。自動採点システムは、ワールドカップや世界選手権で検証やデータの収集を重ね、2020年での本格稼働を目指す。

富士通の山本正已取締役会長

富士通は5月17日、「富士通フォーラム2019 東京」で「国際体操連盟で採用が決定!AIの自動採点システムの全貌と未来」と題したパネルディスカッションを開催。日本体育大学の学長で日本体操協会副会長の具志堅幸司氏、元新体操日本代表で現在スポーツキャスターなどを務める畠山愛理氏を招き、富士通の山本正已取締役会長、藤原英則統括部長(スポーツ・文化イベントビジネス推進本部第二スポーツビジネス統括部)と共に、体操競技の進化やAIによる自動採点システムの未来について議論を交わした。

前人未到の自動採点システム開発は、幾度も壁にぶつかり、苦労の連続だったという。3Dセンシング技術で取得した立体データはまず、選手と器具に識別する必要がある。跳馬のように動かない器具もあるが、つり輪は選手と一緒に動き、鉄棒はしなる。また、器具のどの位置で、どのような姿勢を取っているかによって、得点に影響が出るため、AIはディープラーニングを繰り返しながら、動き続ける選手と器具を識別していく。
次に「技」の認定だ。体操は競技中のすべての演技が「技」というわけではなく、技と技の間にはそれらをつなぐ「動作」が入る。選手の動きを「技」と「動作」に分け、男子は819種類、女子は549種類ある技の中から一致するものを探し出す。男子の技は、475の基本動作に分解し、組み合わせることによって体系化していったという。さらに、平均台や床は選手による振り付けがあるため、動きのバリエーションが多岐に渡り、技の識別が難しい。

富士通の藤原英則統括部長

「技」の採点では、国際体操連盟と協議しながら「わずかに曲がる」といった採点教本の曖昧な表現を「膝と腰の角度は何度以上」と全関節の角度を定義。曖昧な部分を一つ一つ数値化する地道な作業を続けた。そして、国際体操連盟や日本体操協会、選手協力のもと、技の種類や難度を識別し自動採点するシステムの開発に成功。
4月のワールドカップで、自動で採点シートを生成するシステムを試験稼働させたところ、3人の上級審判を上回るスピードで採点されたという。技の種類、難易度、種別などを判別し得点を自動計算するシステムは、審判の負担軽減が期待される。
また富士通は、自動採点システムの開発を通して、63件もの特許技術を生み出した。

元新体操日本代表 畠山愛理氏

畠山氏は「採点競技の難しい点は、選手の感覚と審判や観客の評価が異なることがあるところ。新体操も難易度が高い技の数が増えている。選手のスピードが上がり、判定も難しくなってきている」「テクノロジーを活用して、子供たちにもわかりやすく伝えることは大切。体操界の未来がより楽しみになった」と語った。

日本体操協会副会長 具志堅幸司氏

具志堅氏は「体操界のさらなる発展には、テクノロジーを受け入れ共存していくことが重要。人がテクノロジーを育て、テクノロジーが人を育てるといった双方向の流れが、さらに体操を進化させていく。富士通のテクノロジーによって、体操界に革命が起きる」。さらに「ICTを駆使し、感覚を数値化して活用する選手が伸びていく。ICTによって新技が生まれるかもしれない」と体操界の未来に期待を膨らませた。

富士通が開発した自動採点システムは、360度から選手演技を三次元で見ることができる。審判が見えない部分も可視化することで、公平・公正な判断をサポートし審判の負担を軽減させる。また、選手が日々行うトレーニングの方法も画期的に変える可能性を秘めている。
そして、360度から捉えたリッチなデータは、テレビ映像やCGと組み合わせることにより、ファンが楽しめるコンテンツとなり、競技人気を押し上げることが期待される。そしてそれは、競技団体の収益化にも貢献し、選手育成にもつながっていく。

富士通は、国際体操連盟や日本バスケットボール協会をはじめとする競技団体とパートナーシップ契約、Jリーグの川崎フロンターレとスポンサー契約を締結し、アメリカンフットボールやバスケットボールといった実業団チームも運営している。今後、ICTを活用し選手強化やファンの獲得、次世代スポーツエコシステムの構築を目指す。
自動採点システムは、今後の大会を通じて検証とデータ収集、開発を繰り返し、さらに精度は上がるはずだ。

富士通の総合力はスポーツ界の未来を変えていく。

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